東京地方裁判所 昭和45年(ワ)1294号 判決
第一 当事者
原告
作田啓子
原告
堀内辰郎
両名代理人
藤原修身
被告
島田明郎
代理人
内田茂
被告補助参加人
千代田火災海上保険株式会社
代理人
高橋孝信
第二 主文
一 被告は原告作田啓子に対し金三九万〇八〇〇円、原告堀内辰郎に対し金一一五万八三四三円及びこれらに対する昭和四五年三月一三日以降右各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告らの、その余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は原告らと被告との各自の負担とし、補助参加によつて生じた費用は補助参加人の負担とする。
四 右第一項に限り仮に執行することができる。
第三 事実
一 請求の趣旨
被告は原告作田啓子に対し金四九万〇八〇〇円及び内金四六万〇八〇〇円につき昭和四五年二月一日以降右完済に至るまで年五分の割合による金員を、原告堀内辰郎に対し金二五一万六三九六円及び内金二三一万六三九六円につき右同日以降右完済に至るまで年五分の割合による金員を、それぞれ支払え。
訴訟費用は被告の負担とする。
仮執行の宣言を求める。
二 請求の趣旨に対する被告及び補助参加人の答弁
原告らの請求を棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
三 請求原因
(一)(事故の発生)
次の交通事故により原告らは負傷した。
1発生時 昭和四二年八月二一日午後九時三〇分頃
2発生地 山梨県富士吉田市新屋一三六四番地先路上(国道一三八号線)
3被告車 自家用普通乗用車(コロナ、品川五ぬ一九三)
運転者 被告
4原告車 自家用普通乗用車(オースチン、山梨五の七七九七)
運転者 原告堀内
被害車 原告両名(但し原告作田は原告車に同乗中)
5態様 被告車が原告車に追突。
6傷害の部位程度
病名いずれも外傷性項部痛。
治療期間
原告作田は一一五日間(通院)。
原告堀内は二年五カ月間(内入院は六五日)。
(二) (責任原因)
被告は被告車を所有し、自己のために運行の用に供していた者であるから自賠法三条により原告らの損害を賠償する責任がある。
(三) (損害)
(原告作田分)
1治療費関係 合計金六万三一二八円
内訳
治療費 金二万三一二八円
交通費 金四万円
2診断書代 金八〇〇円(三通分)
3慰藉料 金四〇万円
原告作田は、昭和二七年七月七日生れ、作田医院を営む医師である父桓の二女で、本件事故当時日本女子大学附属中学校三年生であつた。ところで本件事故により、昭和四二年八月二二日、日本医科大学病院で診察を受け、通院しながら約三週間自宅で安静加療したが、経過が思わしくなく、更に同年九月一四日東邦大学病院で診療を受け、同年一二月一四日まで通算一一五日間の加療を要する前記傷害を受けた。
その間、本件事故による直接の精神的衝撃は勿論のこと、中学生最後の夏休み後半を病床で過したうえ、第二学期の初め約一カ月を欠席し、その後も一一月九日まではギブスをはめたままの不自由な身体で登校しながら治療を受けねばならなかつた。
しかも被告の一方的過失に基くものであるにもかかわらず、示談交渉に誠意ある態度を示さない事情を斟酌すると慰藉料として金四〇万円が相当である。
4弁護士費用 金五万円
原告作田は以上のとおり損害賠償請求権を有するところ、被告は任意弁済に応じないので、原告作田は原告訴訟代理人に本件訴訟を委任し、着手金二万円を昭和四四年一〇月二九日に支払い、なお判決言渡期日に成功報酬として認容額の一割少くとも金三万円の支払を約した。
(原告堀内分)
1治療費 金二一万四〇五五円
2附添費 金九万五五三〇円
3入院雑費 金二万一六一〇円
4グリソン締帯代金二二〇〇円
5交通費 金五万〇八九〇円
6診断書代 金一五〇〇円(六通分)
7下宿代 金六万円
本件事故による傷害のため、自宅から大月市所在の市立大月短期大学附属高等学校への通勤が不可能となつたので、昭和四三年一月七日以降同年一二月二四日まで同市駒橋一丁目七番一三号宮乃荘方に下宿したことによる一カ月金五〇〇〇円の下宿代一二カ月分。
8逸失利益合計 金七二万九三二〇円
内訳
イ給料減額 金一万三〇五〇円
昭和四二年一二月分給与(本給)金二万六一〇〇円の半額減額された分。
ロ昇給延伸による損失
金一九万六二七〇円
(a)昭和四三年分 金六三八〇円
昭和四三年四月一日に金一六二〇円(本給一六〇〇円、暫定手当二〇円)の定期昇給実施予定が本件事故による長期欠勤のため同年七月一日まで三カ月間延伸したことによる給与の損失金四八六〇円及び同年六月支給の期末勤勉手当の損失金二二六八円(一六二〇円の1.4カ月分)計金七一二八円の内金。
(b)昭和四四年分 金七七〇〇円
昭和四四年四月一日に金一八二〇円(本給一八〇〇円、暫定手当二〇円)の定期昇給実施予定が右同様三カ月間延伸したことによる給与の損失金五四六〇円及び同年六月支給の期末勤勉手当の損失金二五四八円(一八二〇円の1.4カ月分)計金八〇〇八円の内金。
(c)昭和四五年分以降
金一八万二一九〇円
現在二九才であり、校長等の役職につくことなく前記勤務先に勤務し、かつ、六〇才で退職するとしても、本件事故による昇給延伸のため、本給及び期末勤勉手当のため、本給及び期末勤勉手当につき、昭和四五年には少くとも金八〇〇〇円(内訳、昇給額二〇〇〇円の三カ月分で六〇〇〇円、六月の期末勤勉手当として一カ月分の二〇〇〇円)、昭和四六年以降三〇年間には毎年少くとも金一万円宛の損失を受けることになる。この損失の現在価額をホフマン式計算により年毎に年五分の割合による中間利息を控除して計算すると頭初の金額となる。
ハ 家庭教師失職による損失
金五二万円
勤務の余暇を利用していわゆる家庭教師を行い一カ月金二万円の収入を得ていたが、本件事故以来その仕事もできなくなつた。その損失は昭和四二年九月以降昭和四四年一〇月までの間に頭初の金額となる。
9慰藉料 金一五〇万円
原告堀内は、昭和一五年九月二九日生れで、昭和四〇年三月東京水産大学水産学部製造科を卒業、同年四月以降前記学校に就職し、教諭として勤務していた。ところで、本件事故により、東邦大学病院及び日本医科大学病院で診療を受け、昭和四二年九月一一日以降同年一一月一四日まで六五日間は東邦大学病院に入院、その後現在に至るまで通院治療を受け、時々起る頭痛、肩凝等に悩されている。その間、昭和四二年九月以降同年一二月まで四カ月間は欠勤し、前記のような昇給延伸等の経済損失を受けたほか、従前どおり果して健康な身体に回復するか否か前途に不安を抱きながら生活を続けている。
しかも被告の一方的過失による事故であるにもかかわらず誠意をもつて示談交渉に応じようとしないことが、より一層精神的苦痛を大きなものとしているので慰藉料として金一五〇万円を相当とする。
10弁護士費用 金三〇万円
原告堀内は以上のとおり損害賠償請求権を有するところ、被告は任意弁済に応じないので、原告堀内は原告訴訟代理人に本件訴訟を委任し、着手金一〇万円を昭和四四年一〇月二九日に支払い、なお判決言渡期日に成功報酬として認容額の一割少くとも金二〇万円を支払うことを約した。
(四) (損害の填補)
被告より原告作田に対し治療費分金二万三一二八円、原告堀内に対し金四五万八七〇九円が強制保険及び被告より支払われた。
(五) (結論)
被告に対し、原告作田は金四九万〇八〇〇円及び内金四六万〇八〇〇円(即ち弁護士費用金三万円を除く)につき、原告堀内は金二五一万六三九六円及び内金二三一万六三九六円(即ち弁護士費用金二〇万円を除く)につき各々損害発生の日の後である昭和四五年二月一日以降各完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払を本訴請求する。
四 請求原因に対する被告の答弁
(一) 第(一)項中12345は認め、6(傷害の部位程度)は争う。原告作田は通院実日数合計一〇日で、治療費も金三万一八九四円にすぎず、幸い軽微であつた。原告堀内については二年五月もの長期治療を要したかは疑問であり、入院六五日としても、その余の期間(七一五日)に通院実日数は三一日であつてみれば、比較的軽傷であつた。
(二) 第(二)項は認める。但し原告車は自宅へ右折進行すべく右折の合図を出しながら、容易に右折できるにもかかわらず右折せずウロウロしていたことも事故発生の一因となつているから、原告堀内も責任の一端を担うべきである。
(三) 第(三)項は争う。
殊に原告堀内分のうち、3下宿代金六万円は、その下宿する必要はなかつた。即ち原告は正常な体に復して退院したものであり、かつ、富士吉田市から大月市まで自動車道で二一粁位、電車(富士急行電鉄)で約四〇分の距離である。しかるに東京へ通院できながら右の如く比較的近い処で下宿する必要があつたかは疑わしい。8のハの逸失利益として家庭教師の収入金五二万円をかかげているけれども、これは任命権者たる大月市長の許可を受けておらず、かつ、所得申告することなく営利行為をなしていたから地方公務員法三八条・二九条に該当する違法収入であり、この違法収入を得ることを引続き前提としているので排斥されるべき性質の請求である。のみならず、その対象者にも判明しない者もいて額が不明である。少くとも昭和四四年一月以降は体力的回復しても、なお家庭教師をする意図がなかつたにすぎない。
(四) 第(四)項も争う。なお原告堀内に対して合計金三六万五二〇〇円(内訳入院費金一〇万七七九五円、現金一五万円、原告車の修理代金一〇万七四〇五円)を支払つた。その余の分について示談交渉を重ねたけれども互に主張する金額に相違がありすぎたため不調に終り、被告としては公正な第三者による裁定を得たうえで支払うべく今日に至つたにすぎない。
五 請求原因に対する補助参加人の答弁
すべて不知。
第四 理由
一 (本件事故の発生)
請求原因第(一)項中12345の事実は原告と被告との間に争いがない。6(傷害の部位程度)につき検討する。
親権者作田きえ子の尋問の結果及びこれにより真正に成立したものと認められる甲第八号証、原告作田の本人尋問の結果、成立に争いのない乙第九号証によれば、次の事実を認めることができる。
(原告作田)
病名 外傷性項部痛
通院治療
赤坂外科医院に事故当日のみ受診
日本医科大学病院に昭和四二年八月二二日以降同年九月五日まで(内実日数二日)。
東邦大学病院に同年九月一四日以降同年一二月一四日まで(内実日数八日)。なお同年九月一四日に首から腰にかけて全般的にギブス固定。
<証拠>によれば次の事実を認めることができる。
(原告堀内)
病名 外傷性項部痛
治療 東邦大学病院に昭和四二年八月二四日以降昭和四五年一月二九日まで。但し内昭和四二年九月一一日以降同年一一月六日まで(六五日間)入院、残余の期間中の通院実日数は三一日。なお、その間日本医科大学附属病院にわずか通院したこともあつた。
二(責任原因)
請求原因第(二)項の事実は原告と被告との間に争いがない。なお被告は「原告車側にも事故発生の一因をなす、右折進行を早速にしなかつた責任がある」旨主張するけれども、これを肯認できる証拠はない。従つて被告は原告両名に対し損害を賠償する責任がある。
三(損害)
(一) 原告作田分
合計金三九万〇八〇〇円
1治療費 金二万三一二八円
<証拠>によつて認められる。
2交通費 金四万円
<証拠>によれば、本件事故の翌日、富士吉田市から東京の自宅までハイヤーを利用したこと、通院にタクシーを利用したこと、この交通費合計が金四万円と認めるのを相当とする。
3診断書代 金八〇〇円
<証拠>によつて認められる。
4慰藉料 金三〇万円
<証拠>によれば次の事実を認めることができる。即ち原告作田(昭和二七年七月七日生)は本件事故当時日本女子大学附属中学校三年生であつた。本件事故直後一人立ちしておれない状態になつたこと、翌日親族に附添われてハイヤーで帰京し、父が医師でもあつた関係上、知人の専門医師をたよつて診療を受けて安静療養に努めたにもかかわらず、勉強に耐えられず、前認定のとおり東邦大学病院でギブス固定による徹底的治療を受けた。学校を休む日もあつたが、しかし少々無理しても登校し、主要科目の授業を受け、その余は保健室あたりで休養をとり、ギブス固定していた一カ月ばかりの間は登下校は殆んど父が自家用車で送り迎えせざるを得なかつた。これがため学業成績もそれ相当の低下をもたらし、その回復に努力を重ねざるを得ない反面必ずしも従前の如く、すつきりした気持にもなれない日が、しばらくの間続いていた。
右認定事実関係においては慰藉料として金三〇万円を相当と認める。
5損害の填補 金二万三一二八円
この点は原告作田の主張(自認)のとおり、弁論の全趣旨により被告から治療費として既払いであることが認められる。
6弁護士費用 金五万円
以上のとおり差引き合計金三四万〇八〇〇円の損害賠償債権を有するところ、被告は任意弁済に応じないので、原告訴訟代理人に本訴の提起と追行とを委任し、着手金二万円、報酬として少くとも金三万円を支払う旨を約したことが、弁論の全趣旨によつて認められるそして本件訴訟の経過からみて、被告に負担せしめる弁護士費用は金五万円を相当と認める。
(二) 原告堀内分
1治療費 金二一万四〇五五円
<証拠>によれば、治療費として右金額より若干多く必要とされたことが認められる。
しかし右金額を原告堀内は治療費として主張しているので、その主張どおり認容する。
2附添費 金九万五五三〇円
<証拠>によれば入院中の附添費及び附添人の寝具代として右の金額の出費を余儀なくされたことが認められる。
3入院中の雑費金一万三〇〇〇円
前認定のとおり六五日間の入院治療をしたので、その間の雑費として一日金二〇〇円宛を出費したものと、前認定の病状から推認できる。
4グリソン締帯代 金二二〇〇円
<証拠>によつて治療のため右出費を必要としたことが認められる。
5交通費 金五万〇八九〇円
入通院のための交通費としての右の金額が出費されたことを<証拠>によつて認められる。
6診断書代 金一五〇〇円
<証拠>によれば、勤務先たる学校や捜査機関等に合計六通の診断書を提出し、その代金として右金額を必要としたことが認められる。
7下宿代 金六万円
<証拠>によれば、原告堀内が勤務先まで自宅から通勤していたけれども、本件事故による負傷のため、体に無理をかけない目的で昭和四三年一月以降一カ年間にわたり大月市内に下宿したために出費した部屋代が右の金額であることが認められる。
8逸失利益
イ給料減額 金一万三〇五〇円
<証拠>によれば、原告堀内は勤務先たる高校を昭和四二年九月以降同年一二月まで本件事故による負傷のため欠勤したところ、九・一〇・一一月の三カ月は従前同様(二等級三号)の給料を受けられたけれども、一二月分は半額に減ぜられたので頭初の金額を喪失したことが認められる。
ロ昇給延伸による損害
合計金一二万六八二七円
<証拠>によれば、原告堀内は本件事による負傷のため前認定のとおり欠勤したので、事故の翌年たる昭和四三年四月に二等級三号から二等級四号へ昇給する予定であつたところ、三カ月間延伸して同年七月一日付で昇給したこと、その後も毎年昇給が一号づつあがる予定のところ、右三カ月の昇給延伸が毎年繰返えされることが認められる。従つて<証拠>によれば、昇給延伸による損害として次のとおりであることが認められる。
(a)昭和四三年分
金六三八〇円
昭和四三年四月一日に二等級三号(三万〇八〇〇円)から二等級四号(三万二四〇〇円)に昇給すべき筈であつたところ三カ月延伸して、差額金一六〇〇円及び暫定手当金二〇円との合計金一六二〇円の昇給が三カ月間延びて計金四八六〇円となる。更に同年六月支給の勤勉手当として金一六二〇円の1.4カ月分の金二二六八円となる。この合計金七一二八円が延伸に伴う損害であるところ、その内頭初の金額を原告堀内が請求しているのでそのとおり認める。
(b)昭和四四年分
金七七〇〇円
昭和四四年四月一日には二等級四号(三万六三〇〇円)から二等級五号(三万八一〇〇円)に昇給すべきところ、やはり三カ月の延伸に伴い、差額金一八〇〇円及び暫定手当金二〇円との合計金一八二〇円の三カ月分が金五四六〇円となる。更に同年六月支給の勤勉手当として金一八二〇円の1.4カ月分の金二五四八円となる。右合計金八〇〇八円が延伸に伴う損害であるところ、その内頭初の金額を原告堀内が請求しているので、そのとおり認める。
(c)昭和四五年分以降
金九万九六九七円
昭和四五年四月以降も順次三カ月の昇給延伸に伴う損害を受けるところ、同年四月現在二九才であるので、毎年金八〇〇〇円(内訳昇給額二〇〇〇円の三カ月分で六〇〇〇円、六月勤勉手当を一カ月分として二〇〇〇円)が昇給するものと認められる。この昇給延伸が将来停年まで続くと推測することも不可能ではないにしても、あまりにも長期にすぎると考えられる。原告堀内の地位を参酌して二〇年間認めれば足りると解する。なお原告堀内は「毎年金一万円宛の損失を受けることになる」旨主張するけれども、これを認めるに足りる証拠はない。従つて毎年金八〇〇〇円の損失として、この二〇年間の現在価額をライプニッツ式計算により年五分の割合による中間利息を控除して計算すると頭初の金額となる。
ハ 家庭教師失職による損害
金二四万円
<証拠>によれば、本件事故当時二名の家庭教師をしており、月収金一万円を得ていたこと、本件事故により二カ年間にわたり家庭教師をし得なかつたこと等が認められる。従つて月金一万円宛の二四カ月の損害として金二四万円と認めるのを相当とする。
なお被告は「右家庭教師をしたことによる収入は、任命権者の許可を得ておらず、かつ所得申告をせずに営利行為をしていたから地方公務員法三八条、二九条に該当する違法収入であり、これを前提とする家庭教師失職による損害賠償請求は排斥されるべきである」旨主張する。
そして原告堀内としては任命権者の許可も得ず、かつ、所得申告をしないまま一人ないし数人の生徒を対象に家庭教師を継続して行い、一人一カ月金五〇〇〇円宛の収入を得ていたことは前出の各証拠によつて認められる。しかしながら、勤務時間外で、職種も家庭教師であり、一カ月金一万円程度の副収入を得ることが社会的一般に特別非難されるものとも考えられず、仮に任命権者側よりの許可も申請手続しさえすれば許可を得ることが可能であつたとも推認できるうえ、原告堀内の本来の職務に支障を生じた事情も全然立証ない本件においては、たとえ被告が指摘する法規に従い行政処分される可能性があつたとしても、前認定の程度の逸失利益を交通事故による損害賠償請求においては、その違法性が微弱として認容してさしつかえないものと解するのを相当とする。
9慰藉料 金七〇万円
原告堀内の本件傷害による精神的損害を慰藉すべき額は前認定の諸事実からみて右金額を相当と認める。
10損害害の填補
金四五万八七〇九円
この点は原告堀内の主張(自認)によつて認められる。
11弁護士費用 金一〇万円
以上のとおりで差引き合計一〇五万八三四三円の損害賠償債権を有するところ、被告は任意弁済に応じないので、原告訴訟代理人に本訴の提起と追行とを委任し着手金一〇万円を支払い、報酬として少くとも金二〇万円を支払う旨を約したことが弁論の全趣旨によつて認められる。ところで被告に負担せしめる弁護士費用は金一〇万円を相当と認める。
四(結論)
よつて被告は原告作田に対し金三九万〇八〇〇円、原告堀内に対し金一一五万八三四三円及びこれらに対する訴状送達の翌日たる昭和四五年三月一三日(この点は一件記録によつて認められる)以降右各完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払義務がある。従つて、この限度で本訴請求を認容し、その余を失当として棄却し民事訴訟法九二条、九四条、一九六条を適用して主文のとおり判決する。(昭和四六年七月一五日口頭弁論終結)(龍前三郎)